笑っているような気がした

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

笑っているような気がした


ケンが突然サンフランシスコで休暇中に結婚すると決めた時、
私はどうしてもその時期に、他に動かせないアポがあるから
残念だけどやっぱり行けないわ、とケンに伝えた。

どうせハワイでも後でウェディングパーティーを開催するなら、
サンフランシスコの市役所で挙げる結婚式には
私がいなくても良いよね?と私は思った。

ケンは「うん、いいよ」と笑顔で言ったけれど、
ちょっと声が寂しそうだったような気がした。

それで私はしばらく考えたのち、
ヒロヨちゃんに「ケンの結婚式にやっぱり行くべきかな」と
さりげなく聞いてみた。

この時期私が仕事から2日でも抜けるのは、
たぶんオフィスのみんなにとっても非常に辛いこと。
ヒロヨちゃんも困るかなあ…と思いながらの相談だった。

ヒロヨちゃんは「そんなもん、行かなかんに決まっとるがね!」と
間髪入れず、強い口調の名古屋弁で答えた。

「大事なケン君の結婚式だよ。行ったりゃあいいがね。
仕事なんかどうにでもなるで、行かなかんわ」

「でも、チケットが取れそうにもないから」と私が言うと
ヒロヨちゃんはあらゆるエアラインの情報を調べてくれた。

やっと取れたチケットで、私は14日に出発して、
16日に帰って来ることになった。

ヒロヨちゃんが9日に倒れて、
それからどんどん容体が悪くなって行った時、
私はケンに「ごめん。やっぱり行けないわ。
マミーはヒロヨの側についているからね」と言い、
ケンは「いいよ。いいよ。大丈夫だよ」と答えた。

けれど、ヒロヨちゃんは12日に逝ってしまった。

結果、私はやはりケンのウエディングに行こうと決めた。
せっかくヒロヨちゃんが探してくれたチケットで、
ケンの幸せな姿を見に行こう、と決めた。

ヒロヨが「行ってりゃあって言ったでしょ!」と
笑っているような気がした。
PR